正倉院展


正倉院には聖武天皇の愛遺品とともにたくさんの紙が残されています。どれもが当時の文化を知る貴重なものですが、中でも麻を原料とした色紙と雲の文様紙が印象的でした。5色に色分けされた美しい麻の巻紙に日本の色の原点を見たような気がしますし、雲の文様と麒麟が印刷された物を包むための紙が当時からリバーシブルペーパーであったことに驚きました。どちらも絶妙の色バランス、表面もとても滑らかで1300年前に手漉きされたことを考えると感動します。天皇に献納するという偉大さがここまで美を極めさせたのでしょうか。改めて当時の日本の技術力の高さを感じる事ができました。

紙以外で興味深かったのは聖武天皇の文字の美しさです。スマートでいて力強い楷書体。その当時の歴代天皇の中では字が抜群にきれいだったと聞きました。正倉院展が開催されている奈良国立博物館の入り口にある看板は、当時書かれた聖武天皇の文字から拾って作られています。1300年前に書かれた文字が看板になっているのです。

昔の文字や紙がこのように保存されていることは大きな財産ですね。先人の努力に頭が下がります。当時の文化を知る事ができるだけでなく、紙関係やデザインに従事している私たちにとっても刺激になります。後世に伝わるほどきれいな紙を作ろう。日本の美しさを世界に伝えようという気持ちです。



封筒会社と手紙のスタイル
杉浦正樹